先天性欠損歯
■先天性欠損歯とは?
「先天性」とは生まれながらにして、「欠損」とは歯がないことを指します。つまり、生えるべき歯が生えてこないことを先天性欠損歯・無歯症といいます。本来乳歯の下では将来永久歯になるための芽のようなもの(歯胚)が育っていますが、何らかの理由で歯胚が出来ない場合は永久歯が生えてこず、先天性欠損歯となります。
■原因は?
歯が1~2本欠如している場合、食生活の変化で退化がおきていると考えられているほか、遺伝や妊娠中の栄養欠如・全身疾患・薬物の副作用などが考えられていますが原因ははっきりしていません。先天性欠如歯は親知らず・犬歯・第二小臼歯・側切歯などに多く見られます。
■放置すると・・・?
歯がないままの状態が長く続くと、両隣の歯が欠損部分(歯がないところ)に向かって倒れてきたり噛み合う歯が伸びて噛み合わせを悪くし、歯並びが悪くなるほか顔や顎の変形や骨格が歪んでしまうことがあります。もちろん虫歯や歯周病の原因にもなります。
■治療方法は?
欠損している部分(歯がないところ)に今ある歯を奥からずらして隙間を埋め、歯並びを整えていきます。
先天性欠損治療例
初診時年齢 | 11歳 |
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主訴 | 出っ歯を治したい |
口腔内所見 | 上あごの歯並びのアーチの狭窄と著しい前突(出っ歯)が見られます。下あごの前歯が3本しか(本来は4本)萌えておらず、上下の奥歯の噛み合わせの関係はアングルII級(奥歯の噛み合わせが前にずれている出っ歯の状態)となっていました。 |
診断名 | 右下側切歯の先天性欠損を伴う上顎前突 |
装置名 | ヘッドギア、マルチブラケット装置、パラタルバー |
抜歯部位 | 上顎左右4番抜歯 |
治療期間 | 2年5ヶ月 |
費用の目安 | 800,000円 |
費用の目安 | 800,000円 |
リスク・副作用 |
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治療計画
上あごの第一小臼歯抜歯にて前歯が出ているのを改善し、前歯後退を行うためにヘッドギアとパラタルバーを用います。下あごの前歯1本が先天性欠損でしたが、予測模型にて下の歯は非抜歯で噛み合わせを再構成できることを確認しました。
上顎・正面・下顎
- 治療前
- 治療後
治療結果
■先天性欠損に対する治療
永久歯の先天性欠損で歯数に異常があるケースは、永久歯1本の欠損から上下数本にわたるケースまで様々ですが、当院では上下7本先天性欠損を有する患者さんを経験しました。本症例は下あごの前歯1本欠損を伴う上顎前突(上の歯が出ている)で、上の左右第一小臼歯抜歯を行い上下の歯数は合わさずに予測模型のシュミレーション通りに治すことができました。
■患者協力による前歯のコントロール
上下奥歯の状態を維持しつつ上の前歯を思い切り後退させなければならない歯の移動のコントロールが難しいケースではありましたが、ご本人の協力もよく満足いく結果に導くことができました。
埋伏歯
■埋伏歯とは?
埋伏歯は歯が生えてくる時期が過ぎても歯(歯冠)の全部または一部が歯茎の下または顎の骨の中に埋まって出てこない状態のことをいいます。1歯または数歯が埋伏しているものから、多数歯が同時に埋伏しているものまでさまざまな場合があります。
■原因は?
原因としては多くの埋伏歯は乳歯が早期に脱落したり歯が抜けずに残ったり、顎の骨の不十分な発育などにより、永久歯の生えてくる場所が不足することで生じます。多数の埋伏歯が認められる場合は、遺伝的要素・先天異常・内分泌系疾患・栄養障害などが疑われることがあります。埋伏歯は代表的なものとして親知らずがあり、そのほか犬歯・第二小臼歯・上あごの中切歯に多く見られます。
■放置すると・・・?
埋まっている歯がすでに生えている歯の根っことぶつかって根っこを溶かしてしまったり本来あるべき場所に歯がないことで隣の歯が倒れこんできて噛み合わせが崩れる可能性があります。
■治療方法は?
埋伏歯の歯冠の一部を歯肉から出し、矯正装置を用いて口腔内に引っ張って誘導し、正しい位置に導きます。
埋伏歯治療例
初診時年齢 | 14歳 |
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主訴 | 左上の糸切り歯が変なところから萌えてきた。 |
口腔内所見 | 左上の犬歯が前歯の歯根部から萌出していて、左上乳犬歯(乳歯の糸切り歯)が残存していました。上あごの歯並びのアーチがやや狭くV字型の歯並びです。右下第二乳臼歯が抜け永久歯の萌出開始前でした。上下の奥歯の噛み合わせの関係はアングルI級(噛み合わせは正常)でした。 |
診断名 | 左上犬歯の位置異常を伴う上顎前突 |
装置名 | マルチブラケット装置、リンガルアーチ |
抜歯、非抜歯 | 非抜歯 |
治療期間 | 1年11ヶ月 |
費用の目安 | 800,000円 |
リスク・副作用 |
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治療計画
左上の乳犬歯を抜歯し左上犬歯を本来あるべき位置に移動させます。その移動術式としてマルチブラケット装置にワイヤーのテクニックを併用して、慎重に正確に犬歯の移動をコントロールし排列します。歯の前突、口元の突出を認めるがご本人は気にされていないため非抜歯での治療とします。
上顎・正面・下顎
- 治療前
- 治療後
治療結果
■埋伏歯(犬歯)を治療する価値
患者さんの主訴である左上犬歯のコントロールが可能か?を見極めることが難しく、また実際の歯の移動も技術を要するケースでした。医院によっては移動不可能と判断され、犬歯を抜歯するところも多いと思われます。犬歯は審美的、機能的に重要な歯であり、よほどの悪条件でない限り当院の治療において、抜歯をしないように心掛けています。
■埋伏歯(犬歯)の治療方法
レントゲン所見より左上犬歯歯根は側切歯(2番目の前歯)の歯の根っこと前後的に重なっており、完全に入れ替わってはいませんでした。そこでマルチブラケット装置を装着し、メインワイヤーとは別にオフアーチ(別のワイヤーを溶接しバイパスさせる)で犬歯を慎重に後ろ方向へ移動させ、犬歯の本来の位置に排列させました。
口元の突出感が見られましたが、ご本人がそれほど気にされていなかったため抜歯はしませんでした。オフアーチテクニックはワイヤー屈曲や鑞着(ワイヤー溶接のような作業)の技術、これまでの経験を活かし、ご家族にかなり感動していただけたケースです。
先天性欠損・埋伏歯かな?と思ったら・・・
先天性欠損歯や埋伏歯はそのままにしておくと隣の歯が倒れてきて噛み合わせが崩れてくるだけではなく、お口の中や顎などに様々な悪影響を及ぼします。「永久歯が生えてこない」「歯が埋まっている」などと感じた際には一度ご相談下さい。レントゲン撮影を行い、患者様の症状に合った適切な治療法を提案させていただきます。
矯正治療におけるリスクについて
- 1痛みがでる可能性があること
- 2装置に擦れることで口内炎が出来やすくなる
- 3治療への協力度が低いと治療が長引く可能性があること
- 4歯みがきが難しくなるため虫歯や歯肉炎になりやすくなること
- 5治療後、保定装置(リテーナー)を指示通り入れないことや、その他の指導内容が守れない
場合、後戻りする可能性があること
※上記の内容は個人差があるため、全ての方に当てはまるものではありませんので参考としてご覧ください。
なお、記載の矯正装置は完成物薬機法対象外の矯正装置であり医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。